بيت / 青春 / 麻雀食堂―mahjong cafeteria― / その1 第二話 初めての麻雀

مشاركة

その1 第二話 初めての麻雀

مؤلف: 彼方
last update آخر تحديث: 2025-07-22 01:27:56

2.

第二話 初めての麻雀

 商店街を後にして数歩進んだところで、俺はふと立ち止まり、スマホで時間を確認した。さっきの『あやの食堂』のことが頭に浮かぶ。全自動卓のジャラジャラという音、唐揚げの香り、美人店主『あやの』の少し低めの声。あの店、妙な魅力がたくさんあるな。

 日曜の昼下がり、商店街は人影もまばらで、シャッターが下りた店が目立つ。それでも、どこか懐かしい空気が漂っていて、都会の喧騒に慣れた俺にはそれもまた心地よくて(『満たされる』とはこう言うことだろうな)なんて思った。

◆◇◆◇

 翌週の土曜日、仕事が一段落した俺は、なんとなくまた足をあやの食堂に向けていた。実はここにまた来るつもりでこの1週間は本や動画で自分なりに麻雀を勉強していた。

 暖簾をくぐりガラガラガラと扉を開けると、またあの油の香りが鼻をくすぐる。カウンターの向こうでは、先週と同じくあやのが黙々と鍋を振っていた。

「こんにちは」

「あ、いらっしゃいませ。ちゃんとまた来てくれたのね。嬉しいわ」と、彼女が軽く笑みを浮かべて言う。

「唐揚げ定食、ご飯大盛りで」と注文しながら、店内を見回した。奥の全自動麻雀卓には、またあの4人——若い男性、年配の女性、30代くらいの女性、中年男性が陣取っていて、牌がシャーッと配られる音が響いている。

「ポン」

「リーチです」

 4人は勝負に夢中でこちらのことなど気付いてもいないようだった。

「はい、唐揚げ定食ご飯大盛り。お待たせしました」と、あやのが皿を置く。こんがり唐揚げと山盛りのご飯。見るからに美味そうだ。

 一口頬張ると、カリッとジューシーな味わいが広がり、やっぱり抜群に美味い。黙々と食べてると、麻雀卓から声が飛んできた。

「お、兄ちゃん! また来たのか。今度こそ一局どうだ?」

 先週と同じ中年男性がニヤッと笑いながらこっちを見てる。俺は唐揚げを飲み込んで答えた。

「いいですよ。少し勉強してきましたから」

 最後の一口をかっ込んで水を飲むと俺は500円を置いた「ごちそうさま!」

「おお、勉強してきたのか! えらいな。よおし! みんな、新入りだ。誰か休憩するか? みんなやるならおれが抜けるが」

 全員まだ休憩するつもりはないようだ中年男が抜け番になる。

「よし、そしたら兄ちゃんのセコンドにおれがついててやる。ただの遊びだからよ。気楽にやんな」

「ありがとうございます」

「おれは『メタ』だ。よろしくな兄ちゃん」

「乾です。よろしく(メタ? それ名前なの?)」

 ――こうして、俺の初めての麻雀が今始まった。

استمر في قراءة هذا الكتاب مجانا
امسح الكود لتنزيل التطبيق

أحدث فصل

  • 麻雀食堂―mahjong cafeteria―   【麻雀食堂】エピローグ 騒がしい毎日

    76.【麻雀食堂】エピローグ 騒がしい毎日 俺は結局会社を辞めてあやの食堂とカラオケスナックの両方で働くことにした。それがけっこう性に合ってて毎日笑顔で働くことが出来るようになった。自分の好きな人の隣で働くことの出来る喜びを感じた。 美咲はあっという間に売れっ子の女流プロになっていた。まだ学生だから仕事の量は控えているが、明るく気さくな性格もあり異性だけでなく同性からも好かれる大人気新人麻雀プロとなった。 しかし、美咲は今執筆がうまくいかず連載中だった作品は休載になり苦しんでいるようだった。そんな悩みはおくびにも見せず、勉学に勤しみ、プロ活動の一環として麻雀の対局を配信したりと立派だった。「やめよっかな、小説家」なんてことを言うかもと思って心配していたがそんな様子は微塵もない。「スランプみたいだな。大丈夫なのか」と、一応声をかけてみたが……「スランプ? そんなのは新人には無いものだよ。まだ未熟なだけ。それにこの程度のことでやめるわけにはいかないよ。ファンがいるからね。私の書いたもののファンが。そもそもここまで書けるのは間違いなく才能なんだからやめたりしない。急いで書いたっていいもの生まれないよ。今はお休みでいいの!」と言う。強い妹だ、格好いいよ、美咲。 困ったのは、最近品川愛が休みの日によくあやの食堂に顔を出すようになったことだ。「何で来るんだ、近くないだろ」と言うと「何でってー? 美味しいからに決まってるじゃあないですか。あと先輩の顔が見たいからってのも当然あります!」「ケッ、俺はあんま見たくねーんだよ」「なーんてこと言うんですかぁ! 私がこんなに先輩を慕っているのに?」「おまえとはもう先輩後輩でも上司部下でもない。先輩呼びもしなくていい」「じゃあ『ハ ル ト ♡』って呼びましょうか」「やめてくれ。……先輩でいい」(なにあの女ー。くっそカワイイんだけど。あれがハルトの部下で上司だっていう品川さん? 女の子じゃん、聞いてないんだけど)(あーやだやだ、私らの旦那はモテ過ぎてイヤになるわね。3人目とかさすがにダメよ)「リーチぃ!」 奥の麻雀卓では財前カオリが後輩プロの望月コトノと一緒にアマチュア相手に実戦形式の勉強会を行っていた。  元気いっぱいなリーチ発声はアマチュアではなく望月プロによるものだった。望月プロは絶好調みたいですご

  • 麻雀食堂―mahjong cafeteria―   その8 最終話 恋は食卓にある

    75.最終話 恋は食卓にある 今日はメタさんがいのりを預かる日で、あやのさんとマキの2人とも俺の部屋に来ていた。 ちょうどいい機会だと思い、俺は自分の悩みを夕飯の時2人に打ち明けた。 部下だった人間が上司になりモチベーションが下がっている――と。 情けない話だがこれ以上自分の中だけでモヤモヤさせているのは無理だった。人に聞いてもらいたい。アドバイスが欲しい。 俺は精神的にも追い込まれていた。「じゃあ辞めちゃいなよ」「えっ」「そうだよ、そんなつらい思いしてまで会社勤めすることないよ! それしか道がないならまだ分かるけどハルトには稼いでくる嫁がいるじゃん!」「しかも2人もね。なんなら食堂で雇ってもいいし」「スナックで雇ってもいいよ?」 思いつきもしなかった。仕事ってやめてもいいんだ。そう言われた瞬間肩の荷がおりた気がして気付いたら津波のように一気に涙が押し寄せた。 なんの涙が出たのかも分からなかったが、止めどなく溢れ出る。「明るく生きてこーよ! ほら唐揚げできたから!」ゴトッ 食卓に揚げたての唐揚げが大皿で用意された。 ニオイだけで食欲をそそる。米が炊けるまであと2分。たった2分が待ち遠しい。「ホラホラ泣かない泣かない。オネーさんがチュッチュッしてあげるからねー。ンー、チュッ♡」「あー! マキずるいよ。私にだけ仕事させといてー」「だってアタシは料理うまくないもん」「ウソつけ!」「そンじゃー仕方ないからアタシは飲み物用意するねェ~♪」 そう言ってマキは冷蔵庫からアルコールを何種も取り出した。「えへへ~。こんな時にはやっぱりお酒でしょ。ハルトの気の済むまで飲んだらいいよ。カクテルとか作ろっか?」「もー、マキは自分が飲みたいだけでしょ! ハルト君は付き合うことないからね」「いや、今日は俺も飲むことにするよ。缶ビールもらっていいかな」「オッケー。アタシが注いだげる」 ビール専用の細長い摺りガラスのグラスにトクトクトクトクと缶ビールを注いでいくマキ。 俺は缶に直接口付けてもいいんだが、マキ曰く缶ビールは注がれること前提で味が調整されているからグラスに移し替えて初めて最高の仕上がりになるんだという。 ちなみにこの摺りガラスはなぜそうなっているかと言うとビールがキンキンに冷えているように見せかける視覚的効果を狙ったものなんだ

  • 麻雀食堂―mahjong cafeteria―   その8 第八話 それから

    74.第八話 それから マキとは話し合った結果、子供は作らないということに決まった。45歳でも健康的な子供を出産できる可能性はできるできないで比較すればできる寄りで、成功の%だけを考えれば充分高い成功率があると言える。 だがリスクの高さは若い子の比ではないし、そもそも子供を欲しいという気持ちはマキにはとくになかった。ただ生きる時間を共にする、楽しい恋人が欲しい。そういうことらしい。「だからずっと一緒にいてね~♡」「わかった」 あやのさんは「私は子供を作るのもいいし、できないならそれはそれでいい。自然に任せましょう」と言った。 自然を愛するあやのさんらしい答えだった。 俺も、あやのさんのように自然の流れに身を投じるような爽やかな生き方でありたい。──────────── 俺の生活が一変する出会いがあったあの初夏の日から2年の歳月が流れた。 美咲は今日『日本プロ麻雀師団』のプロテストを受けに行く。美咲なら間違いなく合格するだろう。これからは女流麻雀プロと作家の二足の草鞋というわけだ。こんな格好いい妹を持って兄として誇らしい。 メタさんはプロ麻雀界にプラスアルファリーグのチーム監督として復帰していた。選手時代に稼いだ貯金も底をつきそうなのでジュンコさんに仕事を与えてもらえないかと頼んだ結果こうなったらしい。選手をやめてから今までは何をやっていたんだろう? ジュンコさんは同世代のライバルだった早坂公子プロと組んで『左田早坂のマージャン愛好クラブ』という番組を作った。これが地味に人気があり、それによって発生したグッズや書籍も好評で、生活するには十分な売り上げを出していた。 とても楽しそうな番組で、こんなに笑顔で働いて稼ぎになるなんて羨ましいなと思う。 カンはとくに変化せずいつも通りだ。最近ヒゲがのびるのが早くなってきたのが悩みだとか。そう言えばヒゲって20代前半の頃は4日に一度剃ればいい程度のものだったのに、いつの間にか毎日剃る必要があるようになってたな。あれはなんなんだろう。「ヒゲを毎日剃るようになったのも、手の油が減ってビニール袋をあけにくくなったのも成長なんだろうか」とカンは最近の悩みをSNSで呟いてた。悩み、小さくていいな。 俺はと言うと、教育していたはずの品川愛に抜かれ品川の部下になっていた。 新人時代から感じていた事だが、こ

  • 麻雀食堂―mahjong cafeteria―   その8 第七話 大都会とは

    73.第七話 大都会とは 今日は3人のその後の生活についてしっかり話し合おうという事になり、俺はマキと一緒に新居にいた。ちなみに、あやのさんは今日は来れない。 あと、これは車を持ってない俺の誤算だったのだが、俺の利用してる鉄道はウネウネと線路が入り組んでいて直線が少ない。 鉄道による時間的中間地点というエリアを新居に選んだのだが、実際の距離的にはあやの食堂は新居からそんなに遠くなく、運転免許のあるあやのさんやマキは来やすい場所であったことが判明したのだ。つまり、嬉しい誤算。 なんなら気合いを入れれば電動アシスト自転車でも来れるかもしれない。いや、それは少しきついかな。「ねえ、ハルトは免許持ってないの?」「あるよ、原付きのやつなら(もう乗ってないけど)」「麻雀打てるか聞いたら出来るよと言われた後に点数計算は出来ませんけどと明かされた気分だワ」「高レートの高速道路には入れません、的な」「いい得て妙」 俺は自動車免許を持つ人がすごく多いことについてけっこう違和感を感じてる。 免許なんか取得するだけでやたらお金がかかるし、車を買うとなると大変な金額だし、駐車場や維持費もかなりするだろ? なのになぜそんなにも自動車免許を取ろうとするんだ。ド田舎だというならわかる。だが、ここは仮にも都内だ。交通機関は豊富にある。そして駐車場は高い。車の免許、本当に必要かなぁ? 原付きならバイク本体も維持費も免許も安いから取るのわかるんだけどさ。 その件についてマキに聞いてみた。すると……「出身地は気仙沼(けせんぬま)なの。宮城県気仙沼市。車が無きゃ仕事どころかコンビニにも行けなかったよ。そういうのが嫌になって東京来ちゃったのよね~」「そうなんだ。そう言えば出身地とか知らなかったなー。あやのさんはここらへんに子供の頃からいたみたいなこ

  • 麻雀食堂―mahjong cafeteria―   その8 第六話 超一流の定義

    72.第六話 超一流の定義 久しぶりに打ったリアル麻雀はすごく楽しかった。目線、呼吸、仕草、動作、振る舞い、ほんのさり気ない発言、それら全てが読みの情報になるリアルの対決はネットの麻雀では味わえない面白さがある。あ、もちろん、そんな高度な読みは俺はまだ出来てないよ、でも『読まれた理由』がそれだってこと。そこが面白い。 例えばさ、こんな事があったんだ。3巡目にドラ3赤1の跳満級リャンメンテンパイしてリーチした時。「ンーー。全然わかんないしどうしたモンかな~」とマキが言うからつい「こんなのはただの大ラッキーだから、当たったら事故ですよねー」みたいなこと言っちゃったんだよね。なんで俺は『大ラッキー』なんて言っちまったんだろ。その発言に注目して、そこから細かく答えを紐解いたのがその時に親番のメタさんだ。 メタさんは俺のこのうかつな発言をこう読み取った。(大ラッキー……リーチのみで使う言葉じゃないな。まず間違いなく勝負手だ。8000以上は必ずある。リャンメンテンパイ以上の可能性も大だろう。親のおれはツモられても6000支払いとかになる可能性が高いと読める。じっくり作って大物手で反撃を、と考えていたがそうもいかないらしい) という思考が働いてメンゼンなら12000級が余裕でイメージできる手をリャンメンチー。結果、2900点でかわされたんだ。 これ、喋ってなかったら結果は違ったかもと考えるとすごく面白くないか? リアル麻雀の深さを感じるだろう?  そう、上手い人は喋りひとつ取っても隙がまるでないんだよね。手牌に関することは全くと言っていい程喋らない。割といろんなことをペラペラ喋ってるくせにだよ?(メタさんのこと)「そう言えばさ、先日お手伝いに来てくれた財前さん、だっけ。あの人は何者なんですか。どっかで最近見たとこある気がするんですけど」「ん? カオリちゃんのこと? 麻雀プロだよ。知らないかな『財前姉妹』って」「あっ! わかった、思い出しました! 月刊マージャン部の巻頭で特集されてた人だ! あー、どーりで見たことあるなと思いましたよ」 「先月号の巻頭だったよね。今月号でもセンターカラーで取り上げられてるよ。ほら」 そう言ってあやのさんは今月の月刊マージャン部を見せてくれた。発売日は今日だ。俺も買わなきゃ。「本当だ。すごい人だったんだね」「いやぁ~で

  • 麻雀食堂―mahjong cafeteria―   その8 第伍話 イジワルな答え

    71.第伍話 イジワルな答え「もう、ムリ。降参。俺には難しかった。マキちゃん答え教えて」「んー。あとでね、いま美味しいカレー食べてる最中だから、忙しい」 絶対に食べながらでも教えられるだろと思ったけど、俺は大人しく待つことにした。やっぱり悔しいし、マキがカレーライスを食べ終わるまではもう一度考えてみようと思う。 ……とは言え、ムリなもんはムリなんだよな。どうしても3面待ちの時点で高め安めはできてしまうから。ピンフなんて役が存在しなければなー。「ハルト、本当に思い付かないの? ひとつひとつ試せば答え出ると思うけどな。カレーうまッ!」「いやだって、六七加えて六七七七だと六でピンフつかないから点数違うでしょ。七八加えて七七七八でも八でピンフつかないから点数違くなるじゃん。1七加えて147だと47が一気通貫にならないし。9七加えて369も36が一気通貫ならずでしょ。23加えて147や78加えて369も結局高め安めあるじゃんか」「モグモグ……それだけたくさん考えたのに答えにたどり着かなかったんだ。惜しいトコまでいってるけどね。……カレーがウマいけどっ…〜〜〜カラいっ! あやのぉ~、お水もう一杯ちょうだい」「はーい」ゴクッゴクッ「プハッ。結局は冷たい水が一番うまいよね」 それは言えてる、と思った。「でさ、あやののヒント思い出してみなよ。材料はあるけど揃えてないんでしょ。それはつまりさ……」「あっ、あっ、待って! わかった! わかりましたコレ! 3索7索だ!」「そゆことー。やーっとわかってくれたね。このクイズは一気通貫を見せてるのが罠だって

فصول أخرى
استكشاف وقراءة روايات جيدة مجانية
الوصول المجاني إلى عدد كبير من الروايات الجيدة على تطبيق GoodNovel. تنزيل الكتب التي تحبها وقراءتها كلما وأينما أردت
اقرأ الكتب مجانا في التطبيق
امسح الكود للقراءة على التطبيق
DMCA.com Protection Status